いま、あらためてプロセス・デザイン
去る8月29~31日の3日間、福岡大学で、日本建築学会の大会が開催された。「いま、あらためてプロセス・デザイン -学の新たな枠組みの手がかりとして」というタイトルの研究協議会に主題解説(パネリスト)として参加した。この研究協議会は、東大・野城教授による企画で、昨年に引き続き今後の建築計画研究の方向性を議論するというもの。司会は、明大・園田先生と東工大・藤井先生、主旨説明は建築計画委員会・委員長の滋賀県大・布野先生、他のパネリストは阪大・鈴木先生、理科大・大月先生、横国大・大原先生、九大・田上先生、まとめは九大・菊地先生でした。
協議会の主旨は、昨今複雑な条件、たとえば市民参加やPFI、複合化施設等の公共施設計画が増えており、これまでの施設種別毎のプロトタイプ提案を主とする研究ばかりでなく、それらを繋ぐ横糸としてのプロセスの計画が重要になりつつあり、そこに研究的な目を向けるべきだろうということだそう。
主題解説として、まず施設計画において考慮されるべき諸条件の拡大とその関係性の理解の必要性と、施設計画プロセスにおける建築プログラミングの位置づけ、さらに我々のコンサルティングの取組みと、医療施設における患者マーケティング段階でのコンサル支援システムの研究開発についてプレゼした。
鈴木さんは、コミュニティカフェや宅老所などの専門の計画者不在の、しかも生き生きとした施設的な試みが同時多発的に増えつつあり、そこには社会的存在としての人間の他者との日常的な接触への配慮の必要性があり、「主」的な主体がユーザーとの間に介在していることを紹介した。
大月さんは「さおび(然帯び)」をキーワードに同潤会柳島アパートの66年間の建築的変遷を紹介して、時代と伴に変化する使い方や表層を捉えて、さおびのコントロールの必要性に言及した。またそこに関わる主体としての「地域の決意」の必要性を説き、そうした意思決定手段や表現手段の必要性を投げかけた。
大原さんは、近代にはじまる高齢者施設の、単純な機能-要求関係による派生の制度的歴史を振り返り、後追い的な計画研究を批判した。その上で、施設計画における主体参加の必要性や「ノンフォーマル」な施設とケアシステムの必要性を説き、要求把握型の施設計画が必要であるとした。
田上さんは自身の師である筑波大学名誉教授の栗原嘉一郎先生の言を引用し、それに応えるかたちで「トランスポジション」と「カウンターナラティブ」をキーワードとして、バングラデシュでのユーザー主体のヒ素汚染対策や沖縄米軍住宅のその後の変遷過程を紹介し、「プロセスをインスクライビングする」建築計画「学」を指摘した。
討論では、千葉大・小林秀樹さんが、いまだビルディングタイプを整理し、提案することの重要性が指摘され、創造的行為へのプロトタイプの必要性の再認識を問われた。また司会の園田さんから宅老所が小規模多機能施設として制度化されたことの影響について質問があった。大原さんは小規模多機能はそもそも制度に載らない仕組みであり、制度によって効率化されるとはいかないこと、民間の運営事業者の考え方を変える必要(建物でなく人が変わる)があり、使いこなしが必要であることが指摘された。
また鈴木さんの発表に関連して、街角のコミュニティカフェの発生に、時間的経過が必要かという質問があり、必ずしもそれは限らないこと、構えずにスタートできることが必要であること、制度化するのではなく、現場に任せる自由度が必要であると説かれた。これまでの公共施設の計画には「主」が不在であり、「主」を図書館の司書のように計画に組み込むことの必要性を強調された。
布野さんは、前提となる回路、条件、枠組みの必要性、政治に対する発言の重要性、社会化する努力の必要性を説き、「武器」を持つ必要があるとした。大原氏は、「目利き」であることが重要だろうと。
最後に、菊地さんは、建築計画学の枠を考える場合、外からの視点(リアルな社会問題、仮想敵としての都市計画学や歴史学)が必要だろうと指摘した。
民間から唯一のパネリストであり、コンサル活動を主体にプレゼしたため、研究開発活動についてはあまり理解されないようであった。プロセス・デザインの必要性が討論の主題であるはずであったが、プロトタイプ研究の必要性が確認され、それを見出すための研究と、実際に計画を進める際のプロセス・デザインの必要性が区分されて理解されたことは成果であったと思われる。が、後者にも多くの研究課題が存在し、それらを明らかにしていく必要性については、理解をされた研究者は少数派だったようだ。終了後、大阪ガスの柳父さんや、若手の大学の研究者からも、プロセス研究に関する議論がなされなかったことを残念がる声を聞いた。
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